一途な部長は鈍感部下を溺愛中


辛うじて微笑みは絶やさないでいる。けれど、リラックスには程遠い表情だった。


「ま、ゆっくり味わってくれ」


その表情に疑問を覚えて問いかけるよりも先にそう促され、視線が外されてしまう。私は心の中で首を傾げながらも、部長の言葉に甘えて続きを楽しむのだった。


甘いティラミスはあっという間に別腹に消えていき、殆ど同時に部長も食べ終えたようで、ナプキンで口元を拭っている。


やがて、ひとつ息をつくと顔を上げ、真剣な色を宿す澄んだ瞳が私を見つめた。


「さて、渡したいというのは君の考えている通り、クリスマスプレゼント……に、託けた贈り物だ。その様子だと瑞稀も俺に何か用意をしてくれてるみたいだな」

「は、はい」

「……先に、見せてくれないか」

「えっ?」


思わず聞き返すと、「駄目か?」と甘えるような声で聞き返された。


別に、ダメでは無い。自分なりに一生懸命選んではみたけど、部長のセンスに敵う自信はなかったから、先に渡せてしまうならそれはそれでありがたい。


でも、部長にしては珍しい反応だな、と思った。それに、今日は時々憂うような表情を見せるから、それも気になって、ずっと心の隅っこで引っ掛かっていたのかもしれない。


しかし断る理由もないので、私は軽く首を振り、足元のバスケットから鞄を取り出した。


< 150 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop