一途な部長は鈍感部下を溺愛中
カードキーを見つめ、部長を見つめ、またカードキーに目を落とし。
そこでやっと理解が追いついて、今日一番の勢いで身体中の血が沸騰した。
「えっ……」
それって、つまり、そういうことだよね!?
何度もデートを重ねたことはあれど、お泊まりまではまだ未経験だった。旅行の話なんかも出てなかったので、何となくもう少し先の話かな? なんて勝手に思ってもいて。
だからまさか、そう、これは本当に想定外。
手足まで真っ赤になり狼狽える私に、部長は苦笑した。
「勿論、明日何も予定が無ければでいいし、無理強いはしないが…そうだな、断られたら一人寂しく夜景を肴に酒でも飲むよ」
冗談っぽく笑うその目は、飢えを隠しきれず獰猛な光をチラつかせている。
一体一泊幾らするのか、想像もつかないが、決して安くは無いだろう。
それに、このシチュエーションで、恋人から誘われて、断るなんて普通じゃないことも分かってる。お誂え向きに明日の予定は真っ白だ。
部長はそれ以上何も言わず、私をただ見つめていた。
焦がれるような、希うような、焼け付くような視線に肌が溶けてしまいそう。強い眼差しは、私が罠にかかるのを今か今かと待つ狩人のようだった。