一途な部長は鈍感部下を溺愛中
「……ダメですよ」
放っておいたら服の下を潜り抜けてきそうだった手のひらを捕まえる。
そういえば、距離が近づいたな、と思った理由にはこれもあったんだった。とにかくスキンシップが増えた、っていう。
気付くと感覚の鋭いところばかり触れてこようとするから、気が気じゃないのだ。擽ったさだけでは無い、別の感情も生まれてしまいそうで。
「だめ?」
鼻にかかったような声で、切り揃えられた爪先が恐らく熱を持っているであろう私の耳朶をつついて弄ぶ。
ぐう、と唸り声が出そうになって下唇を噛んだ。
「初詣行くんでしょう……」
「延期でもいい」
「私は、行きたい、です……」
ほんの少し首を後ろに向け、私の肩に顎を預けるようにしてこちらを見上げていた部長と視線を合わせる。
暫く見つめあった後で、降参するように苦笑したのは部長だった。
「仰せのままに」
ぽん、と優しく頭に手を乗せた部長が立ち上がる。
どうやらキッチンまでお茶を淹れに行ったようで、暖房が効いているはずなのに、背中から冷えが襲ってくるようでふるりと身震いした。
いつの間にか、部長がすぐそばに居ることが自然になっていたみたいだ。