一途な部長は鈍感部下を溺愛中
無駄なものがひとつもない、綺麗な部屋。だけどモデルルームやホテルの部屋というには、生活感のある部屋。
一体ここは……夢?
どうすることも出来ず広いベッドの上で固まっていると、ガチャリとドアノブが回る音がして、動揺する。
誰か来た! どうする!? いっそ寝たふりする!? 夢かもしれないし!
混乱した頭でそんなことを考えているうちにベージュ色の扉が開き、見えた姿に絶句する。
「お、目が覚めたか」
そこに立っていたのは、黒いシャツにジョガーパンツというラフさでもその格好良さを失わない、東雲部長その人だった。
最早、驚きすぎて“部長”と呼ぶ声も出てこない。
そんな私を気にも留めず、東雲部長はこちらまで歩いてくると、手に持っていた水や体温計をサイドテーブルに置き、ベッドの端に腰かけた。
ギシ、とスプリングが鳴り、部長が手をついてこちらに身を寄せてくる。
近くなった距離に驚いていると、長い指先が伸びてきて私の首元に触れる。突然の感触に思わず目を閉じ、小さく震えながら耐えていると、数秒と経たないうちに触れていた手は離れ、「うん」と部長が頷く声が聞こえてきた。