一途な部長は鈍感部下を溺愛中
この二年、私が呼ばれることは無かったから、私を連れていくつもりは無いのだと勝手に思い込んでいたし、納得していた。
だって、東雲部長は──……。
「佐藤?」
声を掛けられ、ハッとする。
驚きのあまり固まったままで居たためか、綺麗な顔が怪訝そうにこちらを覗き込んでいた。
その距離にびっくりして一歩後退りながら、私はおずおずと口を開く。
「あ、あの、私で良いのでしょうか……」
「というと?」
「あの、他の皆さんのようにお役に立てるかどうか」
やっと事務仕事に慣れてきたばかりで、今でもこの部の役に立ててるとは思っていないのだ。
他の人たちは、指示も仕事も的確で頼りになるけど、私は自分の仕事を捌くので精一杯で、一人だと解決出来ないこともまだ多くある。
そんな私が視察に着いて行っても、部長の足を引っ張るだけかもしれない。迷惑をかけて、もし、もし部長を失望させてしまったら……それが、怖い。
部長の目を見ていられず、鼠色のカーペットに視線を落としながら弱音を吐く私に、東雲部長はしばらく黙っていたが、やがて落ち着いた声が降ってきた。