一途な部長は鈍感部下を溺愛中
「何から何までお世話になりました。もう見ての通りすっかり回復したので、帰ります! 私の鞄って……」
きょろきょろと見渡しても鞄だけが見つからず、そう尋ねるとどこか浮かない顔で部長が「ああ……」と呟く。
それから、何かを逡巡するように視線を落とした後、なぜか請うような視線をこちらへと向けてきた。例えるなら、散歩の終わりが近づいて悲しげな顔をする子犬のような……って、何を考えてるの私。
ぶんぶんととんでもない妄想を振り払うように頭を振った私に不思議そうな顔をした後で、部長の薄い唇が改めて開かれる。
「別にもう一日泊って行ったっていいんだぞ……?」
「え」
「寝心地だって悪くなかっただろう。それなりに快適な部屋だと自負しているんだが」
それはもう、その通りだったけれど。
……いやいや、でもそういう問題じゃない。嫌か? なんて小首を傾げる部長をちょっと可愛いとか思ってはいけない。何よりこのまま二人きりでいたら、色んな意味で私の心臓がもたないと思う。
「ありがたいお言葉ですが、私もお風呂とか入りたいですし! それに部下が居たんじゃゆっくり休めないでしょう。折角のお休みなのに」