一途な部長は鈍感部下を溺愛中
はい、と答えると同時、滑らかに車体が走り出し、私は緊張しながらなんだか色々と高機能そうなナビに怖々と触れる。
今までも、東雲部長が運転する車に乗ったことはあった。
だけど、いつもとは違う時間帯、シチュエーション、それから、いつもより少しラフな服。たったそれだけなのに、やけにドキドキして仕方なかった。
背の高い建物ばかりに囲まれた景色から抜け出し、しばらく車を走らせていると、段々と見慣れた風景に塗り替えられていく。
そろそろ家だな……と考えていると、不意に隣から「……ごめんな」と声を掛けられた。
突然の謝罪に弾かれたように顔を上げると、部長の顔は前に向けられたまま、視線だけがちらりと絡む。
「君の体調が優れなかったこと、本当なら上司の俺が気付くべきだった。すまなかった」
そのセリフに、反論の言葉はすぐに飛び出た。
「部長は悪くないです! 私が、自己管理できてなくて……」
「いや、部下の様子を気にかけるのも俺の仕事だからな」
やや眉を下げて、困ったようにそう言った東雲部長に、どうしてこの人のことを、あんなに怖がっていたんだろう、と後悔の念が沸き上がる。
本当はこんなに優しくて、面倒見がよくて、誠実で……理不尽なことで怒ったりするような人じゃないこと、分かってたはずなのに。