一途な部長は鈍感部下を溺愛中
東雲部長の一部だけを見て、勝手に怖がって、怯えて、この人のことをちゃんと見ようとしなかった自分が情けなくて、何も言えなくなってしまい俯く。
だけど同時に、ちゃんと部下のことを大事にしてくれて、一人一人を見てくれる。──そんな人が上司で、本当に良かった。心からそう思った。
それから数分と経たない内に車が停止し、顔を上げるとアパートの目の前だった。
目的地の到着を知らせるナビの声が耳を通り過ぎ、もたもたとシートベルトを外している間に、東雲部長がいつのまにか外に出ていた。
私がシートベルトから解放されるのと同時、助手席側までやって来た東雲部長が、ドアを開けてくれる。
そのまま、からかうように「お手をどうぞ、お嬢さん」と手を差し出され、気障なはずなのにあまりにもしっくりきてしまったその姿に、刹那の間呆然としてしまった。
イケメンってすごすぎる……。
いつの間にか私の荷物まで持ってくれていた東雲部長に、何故かその流れのまま手を取られ、繋いだまま錆びついた階段を昇る。
部屋の前まで来たところで、ハッとして私は部長の前に回り込み、なんだか勢いのまま部屋まで来てしまいそうな部長を止めた。