一途な部長は鈍感部下を溺愛中
個室に駆け込んで、ゆっくりと息を吐きながらまだ熱い頬を両手で押さえると、やっと少しずつ落ち着いてきた。
「ほんと、心臓に悪い……」
ここ最近、部長が何かと私に構ってくるので、結構逃げるのに苦心しているのだ。
今日みたいにもう絶対逃げられない! みたいなシチュエーションにされることは早々無いけど、うっかり定時を超えて仕事でもした日には必ず話しかけられる。
内容は他愛ないものばかりだけど、仕事中でも、取引先から貰ったというお菓子や、帰りに買ってきたというスイーツをくれたり、書類を渡すついでに話しかけられたり。
その度私はこの好意がだだ漏れてしまわないように気を付けるのに精いっぱいなので、ここ最近は絶対に残業をしないし、何か話を振られてもすぐに返せるように、何パターンか返事を用意してみたりした。
だけどさすがにさっきの距離を平然と耐えるには、あまりにも私の経験値が足りていない。
あれくらい、何事もなくあしらえるような女の人になれば、こんなに苦労もしないんだろうけど……。
「はあ……困った」
これ以上好きになりたくないのに、嫌いになる理由も見つからなければ、部長をあしらえる力が培われる望みも薄い。