一途な部長は鈍感部下を溺愛中
その言葉に「はーい」と元気よく返事をしたのは横山くんで、横山くんはもうすっかり先ほどまでの動揺を消し去って、私を優しく見下ろした。
「じゃあいこっか。ただ、この状態で出てくとすごい勘違いされるかも」
そう苦笑され、掴むどころか抱き着きかけてた腕を慌てて離す。
いくら混乱してて必死だったとはいえ、ものすごく大胆な事をしてしまった。じわじわと頬が熱くなる。
「ご、ごめんね……!」
「大丈夫、大丈夫。……ちょっと、不可抗力なんすから、睨まないで下さいよ」
次いで、げんなりしたような、呆れたような声がして、顔を上げるとどこかムスッとしたような雰囲気の部長が居た。
ちょっと膨れた頬がかわい……じゃなくて!
折角戸田さんや横山くんの機転でこのピンチから脱出出来そうなんだし、これを逃すわけにはいかない。
じゃあ……と恐る恐る、ぺこりと一つ頭を下げながら部屋を出る。
その刹那、後ろで「あんまり追い詰めすぎると逃げられちゃうぞ、聖」とからかうような戸田さんの声が聞こえて来たけど、それが何に対する話題だったのか、私には分からなかった。