一途な部長は鈍感部下を溺愛中



そして、横山くんはまるで子供の我儘を窘めるような苦笑を浮かべた。


「ならやっぱり、部長はさっちゃんのこと、絶対手放さないと思うよ」


どうしてそこまで言い切れるのか。


不思議に思って、訊ねようと口を開く。しかし、ふ、と腕時計に視線を移した横山くんが「やば、そろそろ出ないとね」と慌てて伝票を手に取ったので、タイミングを逃してしまったのだった。




それから数日経ち、日が暮れたオフィスで珍しく横山くんと二人きりになった。

部長もまだ退勤はしていないようだけど、今日は朝から会議に駆り出されていて、まだ戻っていない。


そんな時、ふと先日のランチでのやり取りを思い出し、「……ねえ、横山くん」と声を掛けてみた。


集中してたら悪いなあ、と思ったものの、「ん?」とすぐに優しい声が返ってきて安心する。


仕事中にごめんね、と謝ってから、私は言葉を続けた。


「この前、一緒にご飯食べたときにさ、東雲部長がその……私の異動は認めてくれないんじゃないかって言ってたじゃない? あれがずっと気になってて」

「ああ……」

「ほら、人事部って他にも異動希望者が沢山いるって聞いてたし、人気なんでしょう? なら、私の後任だってすぐに見つかると思うんだよね」


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