一途な部長は鈍感部下を溺愛中


私は急いでペーパータオルを捨て、洗剤を元の位置に戻すと、端に寄せていたお盆とパソコンを抱え、会議室の出入口に向かった。


部長は相変わらずパソコンの画面に向かっていて、息を詰めながら後ろを通る。


……でも、いくらなんでもこの状況で、一言も声を掛けず出ていくのはあまりにも失礼だろうか。ふと、そんな考えが頭を擡げた。


自分から避けといて何を、と思いながらも、部長の背中に「……先に戻ってますね?」と声を掛けてみる。すると、視線はこちらを向かなかったものの「ああ」と返事が返ってきて安心した。


部長、集中してるなあ。

そう思いながらドアノブに手をかけ、あれ? と首を傾げた。ドアが開かなかったから。


なんで鍵が……? 不思議に思いながら、荷物を抱え直し、鍵のツマミに手を掛けた、その時。


「捕まえた」


背をゾワリと撫ぜるような低い声が流し込まれ、同時に大きな手のひらが、鍵を開けようと試みる私のそれに重なった。


そのままぎゅっと包み込むように握られ、優しく、けれど抵抗を許さないような力でドアから引き剥がされる。


「ぶ、部長……?」



< 80 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop