一途な部長は鈍感部下を溺愛中
怖々と振り向くと、綺麗な笑みが降ってきた。
こちらを絡め取るような強い視線とは裏腹、美しい弧を描く薄い唇に気を取られていると、バンッ、とやや大きな音がして、視線を横にずらすと部長の長い腕があった。
まるで私を閉じ込めるように、両手をドアにつく部長。
「さて、これでもう逃げられないな」
──そして今に至る、と。
ドッドッドッと心臓は太鼓を叩いているし、変な汗がとにかく止まらない。
どうして、何を思って部長がこんな事をしてくるのか全く分からなくて混乱する。
ちらり、無意識のうちにドアを見ると、「こら」とお叱りの声が飛んだ。
「この期に及んでまだ逃げるつもりか? 絶対逃がさないからな」
ムッとした声に咎められ、困惑する。
「あの、私……ごめんなさい」
もう、何に対して謝っているのか自分でも分からなかった。
でも、久しぶりに話し掛けられて、こんな近くに部長を感じられて、そんな場合ではないのに、私を包み込む爽やかな香水の香りが懐かしくて胸が締め付けられる。
折角、部長と関わらない日々に慣れてきたところだったのに、これじゃまた振り出しだ。