一途な部長は鈍感部下を溺愛中
部長はそんな私の様子を暫く見つめたあとで、はあ、とため息を吐き出す。それにびくりと肩を震わせると、ゆっくりと彼の檻から解放された。
そして、何故か抱えていた荷物をそのまま奪われる。
止める間もなかった。驚いて取り返そうと手を伸ばすと、その手を荷物を持っていない方の手に掴まれる。
「これは人質だ。少し付き合ってもらうぞ」
この時間だからもう後に予約もないだろう、と部長が座っていた席まで連れ戻された。
時刻は夕方五時。確かにここは今日、私たちが最後の予約だ。
「……さて」
腕を掴まれたまま向かい合うように座ると、もう一方の腕も掴まれてしまった。まるで、私が逃げるのを阻止するかのように。
そして、部長は戸惑いに揺れる私の瞳をじっと見たあとで、やがて困ったように眉を下げた。
「なあ、やっぱり教えてくれないか。……君が悩んでいたのは、俺が関係してるんだろう」
「……」
「してないとは言わせないぞ。まさか、ここまで徹底的に避けられるとはな」
傷付いたなあ、と呟かれ、言葉に詰まる。
でも。……でも、と私は自分を奮い立たせて顔を上げた。