一途な部長は鈍感部下を溺愛中
部長は目を伏せていて、視線は絡まない。
だけど、お互いの呼吸すら混じりあってしまいそうで私は息を止めた。耳の奥に心臓が移動したのかと錯覚するほど、鼓動が煩い。
触れ合う皮膚から、私の心臓の音が伝わってしまっているんじゃないだろうか。
こんな、あからさまに早鐘を打つ鼓動を聞かれてしまったら、私の想いまで伝わってしまいそうで怖くなり、身じろぐ。すると、少し痛いくらいの力で両手を握られた。
そして、重々しく唇が開かれる。
「……俺は、君を失いたくない。……君に、嫌われたくないんだ」
それは、痛切で、真摯な懇願だった。
届けられた哀願に、呆然としてしまう。だってそれは、私の願いでもあったから。
目を丸くする私に気づくことも無く、部長の嘆願は続く。
「どうしたら、前みたいに笑いかけてくれる? 今までみたいに、たまに怖がられたり、怯えられたりするくらいなら……本当はさせたくないけど、それでもその後で笑ってくれるなら、それでいい。でも、避けられるのは嫌だ」