一途な部長は鈍感部下を溺愛中
美人の真顔は恐ろしくて息を呑んだ私を、まるで挑発するかのように睨み、部長は私の手を片方取ると持ち上げた。
そしてそのまま、私の手が彼の方へと引き寄せられていき──やがて指先に、柔らかい感触が落ちる。
「……!?」
降ってきたのは唇だった。
ちう、と吸いつかれ、また心臓を止めて固まる私を、妖しい視線が絡めとる。
「こういう意味で好きなんだが、今度こそ伝わったか?」
「……ッ、で、でも……!」
「でも?」
食い下がろうとした私に、鋭い視線が突き刺さる。
「まだ信じられないと言うなら……そうだな、次はここにしてやろうか」
ふに、と唇に触れた指先。
人差し指と中指で下唇を押し込まれ、思わせぶりになぞりながら離れたそれに、顔が熱くなった。
真っ赤になりながら閉口するしかない私に、部長はにっこりと作り物めいた笑みを浮かべる。
「無理やり奪われたくないだろう? 信じてくれるよな」
ここまで言われて、気づけないほど鈍感でもなかった。
だけど目の前に放り出されたそれは、あまりにも自分に都合の良い夢のようで、額面通り受け取ることが出来ない自分が居る。