よるの数だけ 守ってもらった
川の流れをなぞるように見つめる横顔に、このひとには目の前に広がる暗闇が見えていないんじゃないかと思った。
わたしは、止めないでほしかった。
今までみたいにただ傍観しているだけの可笑しな存在でいてほしかった。
知りたくない。
だけど、たまらなく知りたい。
「なんで……」
わたしに構うの。
わたしを、庇うの。
「この川もあの川も思い出の場所なんだよね」
「はあ……?」
だから夜中に川にいたのか。
それもどうかとは思うけれど。
「転校するまではこのあたりに住んでたんだ」
べつに如月初雪のことを聞いたわけじゃない。
不穏当な行為だったにしろ、意思を持って行おうとしたのに止められたことを根に持っていたわたしは眉を顰めると苦笑が返ってきた。
「僕の話は興味ないだろうけど、聞いてよ。僕の話のようでそうではないんだ。鳥羽さんに聞いてもらいたい」
そういえば、このひとが自分の話をしようとするのは初めてだった。
へんなの。
けっこう、一緒にいたこともあったのにね。
「僕、うわさどおり、前から他人とは上手く付き合えなくて。ある時この川にかばん丸ごと投げ棄てられたことがあって」
ミナが聞いたら、もっと明るく笑顔でしゃべろうとしないからだよって責められると思う。
「ちょうど嵐が来た次の日で川が荒れてて、拾うのをあきらめて家に帰ったら物を失くすのは何度目だって殴られて……自業自得かもしれないけれど、だけど、けっこう、もうしんどいなあって、悩んでた」
だけど、このひとは、
きっと笑顔も、明るく話すことも、失った物を探すことも、やろうとしてきたんじゃないかな。
それでも届かない人がいることは、わたしも、深く知っていた。