よるの数だけ 守ってもらった


「そんなとき今僕らが住んでる町の交番からかばんが見つかったって連絡がきたんだ。中に入ってた何かで持ち主がわかったみたい。取りに行って……僕と同い年の人が見つけてくれたって聞いた」



川を眺めていた如月初雪のちぐはぐな瞳が、静かにこちらを捉えた。


「その子は校庭から見えた川の土手に引っかかっていたかばんを見つけて、親切に届けてくれたんだ。町を活気付けてくれるヒーローみたいな子なんだってお巡りさんが言ってた」



思わずくちびるを内側に巻いた。



「僕はその子が気になってしまって、その学校まで姿を見に行った。放課後ならすぐに見つけられるだろうってお巡りさんが言っていたから……本当に、あの子だってすぐにわかった。
きみは、だれよりも高く跳んでた。
きみは、きみだけの場所から、僕があきらめたものを見つけてくれたんだ」



このひとにとって
今の話は自分のことではなく、以前のわたしの話らしい。


「それは……余裕があったから。今のわたしだったらきっと見つけられない」

「僕はそうは思わない。泥だらけのかばんを土手に下りてまでして拾ってくれた、優しさが、鳥羽さんにはちゃんとある。今でも絶対にあるよ。きみは、わすれてなんかいない」



どうしてか、また如月初雪の瞳から涙がこぼれた。

透明なのに、どうして涙は見えるのだろう。


つられてわたしの視界もにじんでくるから、泣く資格はないと、奥歯を噛む。


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