ママの手料理 Ⅱ
もう1つは、紫苑ちゃんの記憶が戻らないということ。
紫苑ちゃんを誘拐してから月日が経つのに、彼女は誘拐される前の生活を何ひとつとして思い出せていない。
彼女の言動から、身体は何がどこにあるか覚えていて、俺達を何と呼んでいたかは分かるけれど、俗に“思い出”と呼ばれるものは覚えていないらしい。
それでも彼女は毎日気丈に振る舞っていて、本当に笑顔を絶やさない。
けれど、彼女の記憶を戻す薬は未だ見つからないし作るのにも時間がかかるらしく。
先の見えない霧の中、俺達は手探りで前に進もうとしていた。
「大也さん、聞いて下さい!さっきアイちゃん達と女子会開いてきたんですけど、お店に新しいマカロン置いたら映えるんじゃないかと思って!」
蝉の声が鳴り止まない今日この頃、レジの前で余りの暑さに顔をうちわで仰いでいた俺の目の前に現れたのは紫苑ちゃん。
「新しいマカロン?良いじゃん、湊に言ってみたら?ってか、俺今アイス食べたいんだけど…」
「冷房効いてるし、今そんなに暑くないですよ?あ、今韓国で流行りのマカロンがあるらしくて、その流行を取り入れたら良いんじゃないかなって」
余りの暑さにエプロンを投げ出して上半身裸になりたいのを堪え、俺は彼女の明るい声に相槌を打つ。
紫苑ちゃんを誘拐してから月日が経つのに、彼女は誘拐される前の生活を何ひとつとして思い出せていない。
彼女の言動から、身体は何がどこにあるか覚えていて、俺達を何と呼んでいたかは分かるけれど、俗に“思い出”と呼ばれるものは覚えていないらしい。
それでも彼女は毎日気丈に振る舞っていて、本当に笑顔を絶やさない。
けれど、彼女の記憶を戻す薬は未だ見つからないし作るのにも時間がかかるらしく。
先の見えない霧の中、俺達は手探りで前に進もうとしていた。
「大也さん、聞いて下さい!さっきアイちゃん達と女子会開いてきたんですけど、お店に新しいマカロン置いたら映えるんじゃないかと思って!」
蝉の声が鳴り止まない今日この頃、レジの前で余りの暑さに顔をうちわで仰いでいた俺の目の前に現れたのは紫苑ちゃん。
「新しいマカロン?良いじゃん、湊に言ってみたら?ってか、俺今アイス食べたいんだけど…」
「冷房効いてるし、今そんなに暑くないですよ?あ、今韓国で流行りのマカロンがあるらしくて、その流行を取り入れたら良いんじゃないかなって」
余りの暑さにエプロンを投げ出して上半身裸になりたいのを堪え、俺は彼女の明るい声に相槌を打つ。