ママの手料理 Ⅱ
因みに、彼女が言っていた“アイちゃん”というのは、元下僕候補の5人のうちの1人だ。


全員を番号で呼ぶのは気が引けるから、と、彼女達を雇った初日に銀子ちゃんが“アイ”“マイ”“ミイ”“ユウ”“ユア”という名前を付けた。


確かに可愛らしい名前だが分かる人には分かるだろう、彼のネーミングセンスは最悪だ。


そして、笑美の同期でもあり紫苑ちゃんの世話係だった0823番には、2人によって“ハナ”という名前が付けられた。


理由は、彼女はいつも花が咲いたように可愛らしく可憐に笑っていたから、らしい。



「映えを求めて女子高生のお客さんも増えますよ!」


キラキラと眩しい笑顔を振りまきながら、彼女は楽しそうに俺に頷いてみせた。


彼女の後ろでは、


「申し訳ございません、大也様。私の勝手な提案のせいで…」


ママの手料理で働くアイちゃんが頭を垂れ、


「いえ、全ての責任は私にあります。罰を受けるのは私だけです」


同じく此処で働くマイちゃんが、一歩前に出てきて勢い良く挙手をした。


「紫苑ちゃんは良いとして、何で君達はそんなに悲観的なのー?商品開発なんて悪い事じゃないんだからさ、湊に掛け合ってみなよ!」


レジの機械に覆い被さるように上体を前に倒した俺は、口元に笑みを浮かべながら彼らを諭した。
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