ママの手料理 Ⅱ
確かに悲しかったり辛かったりするだろうけれど、彼女は極端なまでにいつも喜と楽で誤魔化している。


前なら、我慢しないですぐに自分の気持ちー怒と哀ーを吐き出していたはずなのに。


(やっぱり、俺達に遠慮してるんだろうな…)


仁の説明を聞きながら手を叩いて笑っている彼女を見ながら、俺は胸にごちた。


実際、紫苑ちゃんがタメ口で話しているのは航海、笑美、そして元下僕候補の5人だけだ。


12月の時点で既に気を許していたはずの銀子ちゃんや琥珀に関しては、今ではやはり怖がっているのか自分から話し掛けようともしていないし。


そんな彼女に余計なショックを与えたくないのか、壱は紫苑ちゃんの手錠を壊した時以来俺達の前に現れていない。


紫苑ちゃんが帰ってきて本当に幸せだし嬉しいけれど、微かに壁のようなものを感じているのも事実だ。


しかも、この壁を取り除くには彼女が今までの記憶を完全に取り戻さないといけないわけで。


アイス食べる?、という湊の呼び掛けに大声で答えながら、俺の頭の中は紫苑ちゃんの事でいっぱいだった。



「…という事で、どうしたらいいと思う?」


同日、深夜。


俺は自分の部屋に銀子ちゃんと航海を呼び出し、先程感じたもやもやを吐き出していた。
< 218 / 273 >

この作品をシェア

pagetop