ママの手料理 Ⅱ
航海は、能面の様な顔でこくりと頷いた。


「…今だけ、何も知らなかった純粋な幼少期に戻って、隠れんぼをしたい気分になったんです。紫苑さんもそういう時があるでしょう?」


“何も知らなかった”や“純粋”等、紫苑ちゃんが訝しげに思うような事をいちいち入れるな。


普通に幼少期って言えよ…と、俺は心の中でぼやいた。


「いや、別にないけど…でも良いよ、やろう!」


ああ、なんて心優しいんだ紫苑ちゃんは。


俺達の穴だらけの計画にまんまと乗せられるなんて、単純で純粋でピュア以外の何物でもない。



「じゃあ、俺らで隠れよう!鬼は…」


そう言いながら、俺がそっとカウンターの方を見ると。


「鬼ならこいつが適任だろ」


流れ作業のように銀子ちゃんが隣に立つ琥珀を指差し、


「何言ってんだお前だろクソ野郎」


それを受けてむすっとした顔で、琥珀が言い出しっぺの方に顎をしゃくった。


苦手な2人が同じ空間に居る事に気付いた紫苑ちゃんの顔が少しだけ強ばったのが分かる。


「あ、じゃあ2人でやればいいね!はい決定ー」


たとえ演技のうちだとしても、このままだと険悪な雰囲気が漂いそうな事に気付いた俺はパンパンと手を叩き、鬼決めを終了させた。


「俺らが100数えるから、お前らはその間に隠れろよ」
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