ママの手料理 Ⅱ
そして、mirageを裏切ったという大罪を、この男には償ってもらわなければいけない。


しかし、


『俺、もう死ぬまで此処で過ごすって決めたから…!終身刑だけど、死んでも牢屋に入り続けるから……!…もう、誰にも合わせる顔なんて、……』


と、自虐的な言葉を吐き続ける彼を蔑んだ目で見つめていた琥珀は、自分の頬がヒクヒクと小刻みに震えているのに気付いていた。


『…ああいや、お前の刑は終身刑じゃなくて禁固3年だ。あの時は嘘ついて悪かったな、俺が上に取り計らって罰を軽くしてやったから安心しろ』


そう語り掛けるものの、泣きじゃくる彼の耳には何も届いていない。


『…琥珀の右手だって、あれはわざとじゃなくて、…いや、今更言い訳なんてせこいね…。紫苑ちゃんの誘拐も、本当はしたくなかったのに、……ううっ、ごめんなさ、……』


『……俺の右手の事か。…あれは何と言うか、』


琥珀の静かな声で我に返ったらしい伊織が、ぱっと顔を上げる。


『…俺はお前を死んでも許さねぇ。それはこれまでもこれからも変わんねぇな』


囚人の涙に濡れた顔があまりにもおかしくて、そういう雰囲気ではないと分かっていても琥珀のポーカーフェイスは早くも崩れそうになる。
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