ママの手料理 Ⅱ
一層重い空気に包まれたリビングに、


「でも、犯人が女だって分かったわけでしょ?なら、女性の顔に傷をつけるのは少々気が引けるけど、紫苑ちゃんを助けに行く時は僕も参加するから。…壱じゃなくて、この僕が」


明るく笑う仁の声が響き渡った。



「…馬鹿、そんなに簡単なもんじゃないだろうが」


「冗談は止めてください、仁さんじゃ絶対駄目ですって」


途端、またリビングがいつもの様に騒がしくなって。


彼が、俺達にまとわりつく暗い空気を変えたのは一目瞭然だった。



「よし、そういう事で今日の家族会議は終了!紫苑が戻って来れるように、僕らで調査頑張ろう!」


「頑張ろーう」



そうして、第6回家族会議はお開きとなった。


既に夜も更けていて、次々に皆がリビングを後にする中、最後までそのリビングに残っていたのはやはり笑美と湊で。


笑美は湊を部屋に行かせようと説得していたみたいだけれど、湊の、


「笑美、命令だよ」


という優しい声で、彼女はすごすごと1人で自室に向かってしまった。



湊は、今日もリビングで夜を明かすようだ。


こんなに心配性な人を俺は人生で1度も見た事がないけれど、これ程他人を気にかけられるからこそ、俺達も紫苑ちゃんの為に動く事が出来ている。


「ありがと、湊。…おやすみ」


誰にも聞こえない程の小さな声で呟いた俺は、ゆっくりとリビングを後にした。
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