炎のシークエンス
連太郎が私に背中を向ける。もりもりの筋肉に無数の傷がついている。

「うわぁ、痛そう。ひっかき傷?」
「全部、心春がつけた。俺にしがみついて……可愛かった」

そうつぶやいた連太郎の頬がぽっと赤くなる。

「それ、私がつけた傷なの?うそ。だって私の爪って」

いつもは仕事の邪魔にならないように短く切っている私の爪。でも昨日はデートだと思って気合を入れて、付け爪つけてたんだ。
手のひらを広げて見てみると、人差し指と中指のネイルチップが取れちゃってる。

「全然、思い出せない?」

私は二日酔いの痛む頭で考える。

私、クサイでしょ、って言った。連太郎は、全然くさくなんてない、心春のにおい好きだって言ってくれて。
うれしくて自分から抱きついた。キスを仕掛けたのも、暑いと言って服を脱いだのも、脱がせたのも……。
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