炎のシークエンス
初めては、大好きな人とって思ってた。
それは達成できたといってもいいのだろうか。


ホテルで、素敵な夜景を見ながらカクテルなんか飲んで。良いムードになって、カレがスーツのジャケットを脱いで、ネクタイを緩めて。私は「優しくしてください」なんて可愛く言っちゃって。

それが。まさか酒に酔った勢いで、なんて。私のバカ。しかも全然覚えてない。最悪だ。

そっと着ていた服を脱ぐ。柔らかな皮膚に無数のキスマーク。
連太郎が、私の肌に触れた証。

ヤバい、泣きそうだ。

連太郎が好き。自分の中にあるその想いは、いつも押し殺していたはずだ。
だって連太郎が好きなのは桃子だから。桃子が相手じゃかなわない。
だから諦める為に新しい恋を探してみたけど。うまくいかなかった。

ぽろぽろとこぼれた涙。泣くなんて久しぶり。振られた時も泣いたりしなかったのに。

もう、今までみたいに気楽に付き合えない。
私は覚えていないけど、連太郎は覚えていた。それもキツかった。
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