炎のシークエンス
※※※


「心春、ちょっと手伝え」
「はーい」

私の仕事は実家の工場の事務。工場で簡単な手伝いもする。

高校卒業して都心の会社に就職した。だけど仕事に馴染めなくて、無理して体も心も壊して会社を辞めた。結局、実家の手伝いにおさまった。

父の手伝いを終え、事務所のデスクに座る。
付け爪は仕事前に外していた。
いつのまにか自分の短く切りそろえた爪に黒い汚れが入り込んでいる。
この爪なら連太郎の背中に、あんなひっかき傷つけることなかっただろう。痛そうだったな。

連太郎の裸を思い出し、恥ずかしくて悶えそうになる。
事務所に誰もいなくてよかった……。

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