炎のシークエンス
シーン2.燃え盛る炎の中から



夕方。私は母に頼まれて、駅前のスーパーまで自転車で買い物に出た。


ちょうど、帰りの通勤ラッシュの時間。駅から仕事帰りの人がたくさん出てきて、波を作っている。

つい半年前まで、ヒールを履いて、くたびれたスーツを身にまとい、毎日あの波に乗っていた。
とにかく置いて行かれないように必死だった。

でも、無理だった。
脱落したからこそ余計に、会社員として仕事できる人に憧れる。


私が働いていた会社は、残業も休日出勤も当たり前。具合が悪くても休みたいって言えなくて。がむしゃらに働いても、怒られてばかりで。それでも周りの人は文句ひとつ言わずに仕事してるから、私もやるしかなくて。

休みなく仕事をする、疲れて失敗する、怒られる、怒られるのが怖くて委縮するからまた失敗する、怒られる。その繰り返し。
私の会社員人生、仕事して怒られるシーンしか思い出せない。

向いてなかった。そう思うようにしてる。



私は人の波を避けて、駅前のスーパーに入った。
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