炎のシークエンス
私はそっと連太郎の腕に触れた。
連太郎がこの腕でぎゅっと抱きかかえ、燃え盛る炎の中から女性を救っていたシーンが、脳裏に浮かぶ。
きっとこの腕でこれまでにも何人もの人を助けてきたんだろうな。

「私もわかんない。変なこと言ってごめん」

本当はわかってる。この腕に愛情込めてぎゅっと抱きしめられたいのだ。でもすぐにうち消す。
連太郎が私に恋愛感情を抱くことはない。

私は子供のころから連太郎が大好きだ。その気持ちがあの火事を見てから変化した。ただの好きじゃない。男性として意識し始めてしまった。

でも、連太郎が昔から好きなのは桃子だ。
子供の時からいつも見ているのは桃子。私はいつも桃子と一緒にいたし、家も近所だから構ってもらっていただけ。

「うーん。勇気か……心春がんばれー」
「え……」

頑張れって応援しながら、ぎゅっと抱きしめてくれた。
筋肉でカチカチの連太郎の腕の中は、すごい安心感。

「心春なら大丈夫、桃子も俺も心春の味方だから。俺の勇気、心春にやるから。戻ってこい」
「ありがと、連太郎。ありがと」

連太郎の優しさが沁みる。


明日、会社に辞めるって言おう。

連太郎のおかげでやっと決心がついた。


< 30 / 78 >

この作品をシェア

pagetop