炎のシークエンス
玄関先で話をしているわけにはいかず、両親には元上司とだけ告げて課長をうちの客間に通した。

「自動車整備工場か。立派なご実家じゃないか」

相変わらずだ。この、人を見下す話しかた。本当に嫌い。

「書類は郵送で構わない。送料はお前が払えよ」
「わかりました。お忙しい中ありがとうございました」

やっとの思いで出した声はかすれていた。まずい、動悸が激しい。苦しくなってきた。

「十倉にはかなり目をかけてやったのに、正直がっかりしたよ」
「すみませんでした」
「確かに、厳しいことも言ったが君なら出来ると思っていたからだ」
「すみませんでした」

私、どうして家にいてまでこの人にこんなに頭を下げなきゃいけないんだろう。
なんだか、むなしくなってくる。

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