炎のシークエンス
薬を飲んでも眠れぬ夜をなんとかやり過ごし、翌日。

事情を知らない両親は、仕事ついでとはいえわざわざうちを訪ねて荷物を届けてくれた課長に好印象のようだ。心配させたくなくて、否定出来なかった。



もうすぐ約束の9時になる。
また、冷や汗が噴き出てきた。どうしよう。


高らかにインターフォンが鳴る。あぁ、モニターに課長の姿が写ってる……。

「おはよう、十倉」
「おはよう御座います。課長」

課長はいつもと変わらずパリッとしたスーツ姿。
私といえば、会社員時代に着ていたくたびれたスカートに、ブラウス姿。最近は事務服や着心地の楽な服ばかり着ているから、捨てるつもりでいた服たちを引っ張り出してきた。

「行くか」

今日一日、課長と二人きりなんてどんな拷問なんだ。声を聞くのも姿を見るのもしんどい。
今日は今年一番の暑さになるという。熱中症で倒れるかもしれない。いや、いっそ倒れたい。いますぐにでも。
そんなふうに思い詰めながら、課長の後ろをついていこうとした。

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