炎のシークエンス
「なぜ、通りすがりの名も知らぬ部外者にそんなこと言われなければならないんだ。平日の朝にそんなラフな格好でフラフラしているような男に。どうせ、まともな仕事をしていないんだろ」

課長の標的が連太郎に変わった。

私の悪口や嫌味だけならともかく、連太郎を悪く言うなんて。


許せなかった。


「連太郎は消防士です。24時間、課長が寝ていた間も、命がけで人の命を守る仕事をしてきたんです。
何も知らないのに侮辱しないで下さい。
連太郎に謝って下さい」

「と……十倉?」

課長は私に反論されたことに驚いている。
課長に言い返すなんて、初めてかもしれない。

「お世話になりました、課長。皆さんのお荷物になってばかりでご迷惑をおかけしました。私には向いていない仕事でした。
それと。私には好きな人がいます。課長のお気持ちに応えることはありません。
もう、二度とお会いすることはございません。お引き取り下さい」

自分で自分が信じられない。課長を前にスルスルと言葉がよどみなく出てくる。
連太郎がそばにいてくれて、震える体を支えてくれると勇気が湧いてくる。

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