【短編】今宵、君の腕の中
「はいはい……、で?
浮気とか好きな人がどうのこうの…っていう話は、何?」
「え?……あぁ!思い出した…。」
言い返したことも、隼に簡単に流されて。
不満を感じつつも顔を上げて、
暫し考えたあと。
隼の腕の中から抜け出て距離を取り、私は1週間前に見た光景を思い出して、斜め上の隼をジッと見つめた。
きっと何も無いハズだと思いながらも…やっぱり、聞くのは少し怖い。
その考えに囚われて言い淀んでいると、
「何?思い出したんなら、言ってみれば?吐き出さねーと、楽にならないだろ?」
「う、ん…。」
隼の優しい笑顔に促されるように、私は口を開いた。
「1週間前の夜、……一緒に歩いてたキレイな女の人、誰?」
「キレイ、な女…?」
隼は一瞬、考え込むように視線を巡らせた直後、あぁ…と呟き、クスクスと笑い出した。