お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 司さんの生活は割と庶民的というか、コンビニ弁当だって食べるし、わたしと一緒にインスタント麺だって食べるときがある。

 だけど彼のご両親はそういうものを食べなさそうというか。お金持ちのイメージがあって、きっとそういう方たちはマナーにも厳しいに違いない……!

 そんなイメージを持っていたわたしは、マナーの本を購入してこっそり読んでいた。
 そのおかげで、高級店での食事にも慌てずになんとか対応することができた。

 わたしの緊張を感じたのだろう。司さんは『別にそこまで気にしなくていいよ』なんて言っていたけれど、彼の恋人として恥ずかしくないようにしたいし、これから彼のそばにずっといれば高級店に入る機会も多くなるだろう。

 実際に会った司さんのお母様はわたしのことを覚えていたようで、『あのときの女の子なの?』と驚きながら、とても気さくに話してくれた。

 社長も今まで直接話したことはなかったけれど、優しい笑顔でわたしと会話をしてくれて、食事を終える頃には肩の力が抜けていた。

 わたしみたいな平凡な人間を受け入れてもらえるかな、なんて考えてしまっていた部分が正直あったけれど、司さんのご両親はとても素敵な方たちだった。

「だから言っただろ。気にしなくていいって」

 家に帰ってくるなり、いっきに気を抜いてほっとするわたしに司さんは笑った。
「相手は社長だし、恋人のご両親だし……勝手に一緒に住んでいて、これ以上失礼のないようにと考えてしまうものなんです! 交際を反対されてしまったらとかも考えたし……」

「責任のとれない年齢ではないのだから、反対なんてしないだろう。もしされたとしても、俺は君を選ぶ」

 上着を脱ぎながらなんともない感じでそう言われて、ソファに座っていたわたしはちょっとだけ照れてしまう。
< 102 / 110 >

この作品をシェア

pagetop