お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 これはもう一度確認するべきだ。
 そう思ったが、運転をはじめた涼本さんに再び尋ねるタイミングが掴めず、車は二十分ほど走って会社の最寄りから三駅離れた飲食店の集中する駅前へ着いた。

 有料パーキングに停めた車から降り、涼本さんについていく。
 彼が向かったのは、お酒と料理が楽しめる和食店だった。

 店内はテーブル席の個室になっていて、ゆったりとしている空間だ。
 奥の席へと案内されて座るとメニューを渡されて、店員は一度去っていった。

 どうしても、車に乗ったときに聞いた言葉が気になって落ち着かない。メニューを見ていても、向かいに座る涼本さんをちらちらと見てしまう。

 わたしのことが気になると言ったこと、ちゃんと確認しておかないと。本当ならうれしいことなのだから。

「なにを食べるか決まった?」

「はい。ちらし寿司を……」

 揚げ物のような重いものは胸がいっぱいで食べられないと思った。涼本さんもさっぱりとした冷たい蕎麦で、ふたりともお酒は頼まなかった。

 どうやって話を切り出せばいいのだろう。メニューが下げられて少し経ち、そわそわしながら涼本さんの様子を窺っていた。

「涼本さん、聞きたいことがあるんですけど」

「うん?」

 静かな眼差しがこちらに向いて、いっきに胸の鼓動が騒がしくなる。涼本さんに聞こえるのではないかと思うくらい、うるさく感じていた。

「わたしのことが気になるって、どういうことですか?」

 彼の言葉の意味を確かめたかった。
 本当にわたしのことを気になっているのなら、それなりの言葉が返ってくるだろう。

 不安と期待が交じって、膝の上で軽く握っていたこぶしに力を入れた。
 涼本さんがわたしを気になる理由を知りたい。彼の気持ちを聞きたい。

「それは君の……」

 わたしから一度視線を外した涼本さんを見て体が熱くなってきた。
 胸の鼓動が騒いで、どうにかなりそう。
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