お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 本当に?などと考えつつ、期待が昂っていたけれど。

「君の匂いが、気になる。それで、いろいろと聞いてみたくて」

「……え? 匂い?」

 匂いって、どういうこと?
 目をぱちぱちさせながら涼本さんを見ていると、彼は困ったような顔をする。

「変なことを言って悪い。もちろん、君自体も気になってはいるが、とにかく君の匂いが……なんだか、すごく不思議な感じがするんだ。どこか懐かしいような」

 きょとん、としているわたしにばつが悪いと思ったのか、涼本さんはそう説明したけれど、わたしはまだよくわからなくて彼を見つめたまま。

「それは、匂いフェチ的な……?」

「いや、今まで興味を持ったことはないし、香水なども詳しくはない」

 戸惑うわたしに、彼はそっと目を伏せて話はじめた。

「最近、体調を崩しやすくて。病院で検査をしてもらったが、とくに異常はなかった。医者からは寝不足ではないか、なんて恥ずかしいことを言われてしまって……確かに、日ごろから睡眠や食事が不規則だったし、会議室で昼寝をするようにして、休んでいたんだ」

「そうだったんですね」

「息抜きにもなるんだ。ひとりで昼寝した後、頭もすっきりするから午後の会議も楽になるような気がして」

 商品企画部で活躍しているから仕事の量も多いだろうし、疲れもたまってしまうのだろう。

「でも体が弱っていることを周りには知られたくないから、第二から第一会議室にこっそり移って寝ていたのだけど、君に見られてしまって。とりあえず口止めしたんだよ」

 あのときの〝秘密〟という言葉は、もしかしたらからかって言っていたのかなと思っていたけれど、本当に彼は黙っていてもらいたかったんだ。
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