お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
視界いっぱいにあるのは、目を開けた涼本さんの整った顔。
まだ少し反応が鈍いようで、ぼんやりとわたしを見ている。
「……誰?」
「わ、わたし、あの、総務部の野山香菜です!」
とりあえず名乗って離れようとしたが、彼はまだわたしの腕を掴んだままだった。
「野山……?」
自分の知っている人間か考えるような間を作った涼本さんは、軽く小首をかしげてわからない、といった顔をした。
それはそうだろう、部署も違うし今まで話をしたこともない。
「一度もお話をしたことはありませんし、いつもわたしが涼本さんの姿を一方的に見ているだけで……なんとなく、手を伸ばしてしまって。すみません!」
彼が腕を離さないのは、髪を触ったことに怒っているのだろうと思って謝った。
本当に、触るつもりはなかった。綺麗な彼の顔を見ていたら、ぼうっと惹かれてしまって……。
「……そうか」
涼本さんの寝顔を思い出していると、彼が体を起こして膝をついているわたしを見下ろしてくる。段々と眠気が覚めてきて、状況を把握したのだろう。
知らない女に髪を触られて、気分を悪くしているかもしれない。どうしよう、怒られたらとにかくもう一度謝るしかない。
そう思って身構えていると、涼本さんのもう片方の手がわたしの方へ伸びてきた。
「え?」と、声を出している間に後頭部をグイッと押されて、彼は上体を前に倒してわたしに顔を近づける。
キスをしてしまいそうなほどの距離から、耳もとへと唇が寄った。
「どうかこれは、君と俺だけの秘密にしてほしい。昼寝をしていること、他にバレたくないんだ」
ゆったりとした声と一緒に息が耳にかかって、体が震えてしまった。そして、涼本さんが顔の横でじっとわたしを見つめている気配がした。
どうして、そんなに近くで見ているの……?
落ち着かない気分になりながら彼の視線を意識していると、涼本さんはわたしから離れ、淡々とした表情で「わかった?」と確認してくる。
耳もとに彼の囁きがまだ残っていて、それにどんどん体が火照るのを感じながら、慌ててうなずいた。
まだ少し反応が鈍いようで、ぼんやりとわたしを見ている。
「……誰?」
「わ、わたし、あの、総務部の野山香菜です!」
とりあえず名乗って離れようとしたが、彼はまだわたしの腕を掴んだままだった。
「野山……?」
自分の知っている人間か考えるような間を作った涼本さんは、軽く小首をかしげてわからない、といった顔をした。
それはそうだろう、部署も違うし今まで話をしたこともない。
「一度もお話をしたことはありませんし、いつもわたしが涼本さんの姿を一方的に見ているだけで……なんとなく、手を伸ばしてしまって。すみません!」
彼が腕を離さないのは、髪を触ったことに怒っているのだろうと思って謝った。
本当に、触るつもりはなかった。綺麗な彼の顔を見ていたら、ぼうっと惹かれてしまって……。
「……そうか」
涼本さんの寝顔を思い出していると、彼が体を起こして膝をついているわたしを見下ろしてくる。段々と眠気が覚めてきて、状況を把握したのだろう。
知らない女に髪を触られて、気分を悪くしているかもしれない。どうしよう、怒られたらとにかくもう一度謝るしかない。
そう思って身構えていると、涼本さんのもう片方の手がわたしの方へ伸びてきた。
「え?」と、声を出している間に後頭部をグイッと押されて、彼は上体を前に倒してわたしに顔を近づける。
キスをしてしまいそうなほどの距離から、耳もとへと唇が寄った。
「どうかこれは、君と俺だけの秘密にしてほしい。昼寝をしていること、他にバレたくないんだ」
ゆったりとした声と一緒に息が耳にかかって、体が震えてしまった。そして、涼本さんが顔の横でじっとわたしを見つめている気配がした。
どうして、そんなに近くで見ているの……?
落ち着かない気分になりながら彼の視線を意識していると、涼本さんはわたしから離れ、淡々とした表情で「わかった?」と確認してくる。
耳もとに彼の囁きがまだ残っていて、それにどんどん体が火照るのを感じながら、慌ててうなずいた。