お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
「買おう」

「ふ、ふたつですか?」

「どちらもかわいいんだろ」

「でも、使うのはわたしだけだし……」

「片方は俺が使うよ」

 淡々とした表情で答えた涼本さんに、わたしは目をぱちぱちさせる。

 涼本さんがくまのマグカップを? 家にあるものがシンプルだから、かわいい系のマグカップを使うなんて予想外。
 もしかして、気を遣ってくれている?

「涼本さん、こういうのを好きって感じがしませんよ……」

「君が気に入ったものを俺も使いたいと思ったんだ」

 歩き出して微笑みながらそう言った涼本さんに、ドキッとした。どうしてそんなふうに考えてくれるんだろう。

 理由がわからなくても、涼本さんの言葉はうれしかった。だけど、あまり頬を緩めたままでいたら変に思われるから、平静としていないと。

 黙ったままそんなことを考えていると、彼がわたしをじっと見つめてくる。

「もしかして両方使いたいの? 意外と欲張りだな」

「そんな、違いますよ! 一緒に使いましょう、お揃いですね!」

「使うのが楽しみだよ」

 平然としている涼本さんの隣で、わたしは自分の〝お揃い〟という言葉に照れてしまった。余計な発言で使いづらくしてどうするんだ!

 このマグカップが特別なものに見えてくる。
 きっと使うときに涼本さんのことが頭に浮かんで、ドキドキしてしまうんだろうなと、マグカップを見つめながら思っていた。



 買い物を終えた後、デパートの上階にある洋食レストランで遅めの昼食を取った。

 何度か一緒に食事をしていても外食には慣れず、最初は緊張して固まっていたけれど、ふたりで会話をしているうちにこわばりは解けて、料理を美味しく食べられた。

 そして、映画を見て帰ろうということになり、テレビで話題になっているファンタジー映画を一緒に見た。

「はぁ……面白かったですね」

「そうだな。迫力もあってよかった」

「終盤泣けましたよね。もう涙を我慢するの、必死でした」

「だから隣でもぞもぞ動いていたのか」
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