お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 なんとか寝落ちせずマンションまでたどり着き、運転席の涼本さんに「ありがとうございました」とお礼を伝えたが、頭はちょっとだけぼうっとしている。

「大丈夫か?」

「はい。運転をしてもらっていたのに、すみません」

「そんなこと気にするなよ」

 シートベルトを外した涼本さんは、わたしの頭をぽんっと優しく撫でる。
 焦がれる想いが沸きあがってきた。

「今日、涼本さんと出掛けることができてうれしかったです」

 改めてそう言葉にすると、涼本さんがわたしの顔を覗くように見る。

「また行く?」

「……いいんですか?」

「君と過ごすのは楽しいから」

 そんなふうに言ってもらえるなんて思っていなくて、胸の奥が温かくなる。
 毎日顔を合わせているから、少し心を許してくれているだけだろうけど。

 でも……わたしの正直な気持ちは、隠さなくてもいいかな?

「マグカップ、大切に使います。涼本さんとお揃いで、すごくうれしい」

 あのマグカップも子供っぽいって思われているだろうし、ふたつ買ったのも気遣いだっただろう。それでも、お揃いだって思ったら使うたびにドキドキするんだろうな。

 考えて頬が熱くなるのを感じていると、運転席の涼本さんがわたしの方へ手を伸ばして髪をさらっと撫でた。

「かわいいことを言うんだな」
 
か、かわいい……!?
 ああ、やっぱり子供っぽいって思われたのかも。

 涼本さんの指がちょっとだけくすぐったくて、ビクッと体を反応させると、彼の手が頬へと移っていった。
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