お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
「大丈夫か?」

 わたしを気遣う優しい声に、ほっとする。

「はい。涼本さんはどうしてここに……」

「営業部に寄って戻ろうとしたとき神坂に会って、君がここに居ると聞いたんだ。それで来てみたら、なにやら険悪そうな雰囲気をさっきの女性たちから感じて、どうしたのかと思った。よく絡まれるのか?」

「いいえ、はじめてです。最初、神坂さんとどういう関係?なんて聞かれてしまって」

 困った笑みを浮かべながらそう言うと、涼本さんがわたしの肩を引き寄せる。

「君の恋人は俺なのにな。さっき、どうして俺のことをはっきりと言わなかった?」

 窘めるような声色に、ドキッとする。
 なんて答えればいいのか。わたしなんかが付き合っているって話しても、信じてもらえないと思ったから……。

「……自信が持てなくて」

 結局はそういうことなのだ。
 面倒臭いって呆れられただろうか。もっと上手く誤魔化して、話題を変えてしまえたらよかったのに、わたしにはそんな器量はなかった。

 涼本さんの反応が恐くてじっとしていると、彼が小さなため息をついたので体に力が入った。

「すみません、わたし……」

「会社じゃなかったら、君を抱きしめているところだ」

 ……え?

 不機嫌にさせたと思っていたので、涼本さんの言葉にぽかんとしてしまう。
 そんなわたしを見て、彼は優しく口もとを緩める。

「何度でも言うよ、君が自信を持てるように。君の恋人は俺で、俺は君のことが好きで仕方がない」

 微笑む涼本さんが、わたしの頭を撫でた。
< 87 / 110 >

この作品をシェア

pagetop