お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 うれしさと気恥ずかしさが交じって、すぐに頬が熱くなっていく。
 自信のないわたしを想ってくれる彼の優しさに、胸の高鳴りがどんどん大きくなっていった。

 わたしが不安になったり悩んだりしたら、きっと寄り添ってくれるのだろう。
 涼本さんの恋人として、甘えてもいいかな?

「今日、早く帰ってきてくれますか?」

 彼の手を握ってドキドキしながらそう言ったわたしに、彼は目を細めて「早く帰るよ」と言ってくれた。



 定時に仕事を終わらせたわたしは、帰り道にスーパーで買い物をしてから涼本さんの家に帰宅した。

 外食もいいけど、先に帰って食事を作りながら家で涼本さんを待つのも好き。

 ほとんどメニューはローテーションだけど……。
 よく作るのは野菜炒めで、今日もそれだ。あと買った惣菜もお皿に盛りつけて、ご飯が炊けるのを待ちながらお風呂の支度もしておく。

 わたしが帰宅してから一時間ほど経った頃、涼本さんが帰ってきた。

「おかえりなさい!」

 リビングのドアを開けてそう言うと、涼本さんは小さく口もとをゆるめて「ただいま」と返した。

 涼本さんは約束通りいつもより早く帰ってきてくれた。
 帰宅後の挨拶は今までもしていたけれど、毎度くすぐったい気持ちになってしまうのにはどうしようもない。

「お腹すきました? ご飯出来ていますよ」

「ありがとう。すぐ食べる」

 自室に鞄を置きに行った涼本さんの姿を見つめながら、気持ちがどんどん舞い上がってくるのは、彼と一緒に過ごせることがうれしいから。

 恋人ということに自信の持てないわたしに、呆れず好きだと言ってもらえたことがちょっとだけわたしの自信になったのかもしれない。

 浮かれてしまうのだから、単純だなと自分でも思ってしまう。
 リビングに戻ってきた涼本さんとダイニングテーブルで食事をして、後片付けの洗い物は彼がやってくれた。
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