もどかしいくらいがちょうどいい

 身にまとう不幸体質の一発目のお仕事は、入学式直前にこじらせた風邪によって1週間の欠席。ようやく完治してみんなよりも1週間遅れで入ったクラスの人間関係は既に構成済みで、わたしが入る余地なんてどこにもなくて。気が付いたら、中学時代と全く同じ光景がわたしの前に展開されていた。あれこれ再放送?
 
 これじゃだめだと今世紀最大の勇気を振り絞って話しかけた隣の女の子はすごく気さくで優しくて、たまたまわたしが見ていたアニメの主題歌を担当してたアイドルグループの話題で盛り上がってその流れで彼女の所属している女子グループに入れてもらうことができた。

 そう、ここまでは、良かった。ここまでは。
 問題は──


「…………全然話についてけないぃーー……」


 現実のアイドルの話全然分かんない。インスタで上がってるおしゃれスイーツの話分かんない。誰それが付き合ってて誰それが別れたって恋バナ分かんない。

 なんかもう、あの空気で分かる。
 ……あ、なんか違うわーって思われてるの!

 このままだと本当にまずい。確実にハブられる。また中学と同じぼっち学生生活が始まってしまう。


 さあっと、一気に血の気が引いて呼び起こされるのは中学時代の苦い思い出だ。
 
 体育の授業でペアを組む人が見つからなくてぽつんと一人佇むわたし。それを見たクラスの一人が手を上げた。


『せんせー鈴木さんが余ってまーす』

『おい鈴木と組んでくれるやついるか? ……いないのか? しょうがない、先生と組むか』

『鈴木さん友達作りなよーどんだけひとり好きなの? ウケる』

『それな。あはは』

『……あはは……』



 いっ、イヤァーーーーーーーーーーーーーーー!

 わたしは声にならない悲鳴を上げながら頭をぐしゃぐしゃにかき乱す。
 ドッドッド、と口から心臓が飛び出そうなほど脈打っている。脂汗が額を伝う。


「ど、どうにかしないと……」


 一刻も早く手立てを打たないと……、ぼっち時代に逆戻りする。
 けどあの輪の中でどうやって接していったらいいのか分かんない。今まで自分から話題振ったことなんてほぼないし、仮に振ったとして……え? なに? みたいな反応された日にはわたしは……わたしはぁ……!

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