翠も甘いも噛み分けて
「オーナー、お先に失礼します」

 店員は幸成に声を掛けると、スタッフルームへと向かった。しばらくすると、帰り支度を済ませた格好で現れた。

「では、どうぞごゆっくり」

 そう言って店員は裏口へと向かうと、ドアが閉まる音が店内に聞こえた。店員と入れ違いに幸成が売り場に現れた。約束のスイーツとコーヒーがトレイに乗せられている。最強の組み合わせに、翠の瞳が輝いた。

「待たせたな。今日のケーキは抹茶のロールケーキと桜のマカロンだ。コーヒーはブラックでも大丈夫か?」
「うん、全然へっちゃら。てか、めっちゃ美味しそう!」

 イートインスペースのテーブルに、ケーキセットが並べられた。コーヒーは幸成の分も用意されているけれど、スイーツは翠の分だけだ。
 
「あの頃は、さすがに学校には綺麗に飾りつけしたケーキを持っていけなかったからなあ。クリーム潰れたら見た目最悪だし、食中毒起こしたら大変だしな」
「だねえ、でもクリームなしのスポンジケーキやカップケーキ、美味しかったよ。もちろん焼き菓子だって毎回楽しみにしてたもん」
「うん。いつも俺の作るお菓子をうまそうに平らげてくれてたもんな。スイの反応見るのが楽しかった」
「なんかそれ、私すごく食いしん坊みたいじゃない?」
「実際そうだったろう?」

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