翠も甘いも噛み分けて
 高校を卒業してから、幸成は洋菓子の専門学校に進学し、大手ホテルが経営する有名パティスリーで働いていた。
 とあるテレビ番組でお店の取材を受けた際、イケメンパティシエと紹介されてから、幸成は有名人となり、幸成目当てのお客さんが激増したと耳にした。もちろん、幸成の作るスイーツも評判が良く、お店でも一、二位を争う人気の商品だった。

 そんな中、幸成はパティスリーを退職して三か月前に独立開業した。それが「パティスリー VERDE(ヴェルデ)」だ。
 お店がオープンしてから、幸成のファンがSNSでお店を紹介した投稿がみるみるうちに拡散され、VERDEは瞬く間に大繁盛だ。

「ありがたいことに、お客さんが宣伝してくれるからな。それよりも、お前ちょっと痩せすぎて、見た目がなんか気持ち悪いんだよ。他の人はどう思うか知らないけど、俺は学生時代のスイがいい。だからあの頃の体型に戻れ」

 酷い言われように翠は内心ムッとするも、幸成が本気で心配してくれていることは伝わった。

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