天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 高級店は時間をかけて食事を楽しむものだ。脳外科医としていつ呼び出しがかかるかもしれず、時間に追われているという理由はあるものの、意外なほど庶民的で驚いた。

 料亭に頼んでお弁当を届けてもらうという方法だってあるのに。

「ねぇ啓介さん。島津家ではお好み焼きとか食べたの?」

「いや」

 やっぱり。

「会話もない。ただ静かに食べるだけの食事だよ」

 あれ? 言い方がなんとなく皮肉めいている。

「俺はこういう食卓がいい。話をしながら楽しい食事はいいな。すべてがご馳走だ」

 穏やかに微笑む表情を見る限り、私に合わせて無理をしているような感じではない。

 結婚して間もない頃、献立に悩んでいた自分が懐かしくなる。
 たっぷりと時間があったのもあるが、啓介さんに喜んで欲しくて、栄養学や料理本を広げては真剣に悩んでいた。

 あんなに悩まなくても啓介さんは喜んでくれたのにね。

「あ、焼きおにぎりちょうどいいよ」

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