天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 書類と向き合い、長いようで短い三十分が経ち、扉がノックされた。

「はい」

 入ってきたのは啓介さんだった。

「啓介さん」

 慌てて立ち上がり出迎える。

 啓介さんはコートを腕にかけ、ネクタイこそしていないが濃紺のスーツ姿で現れた。やはり仕事を抜け出したのか。

「ごめんなさい。忙しいのに」

 彼は「いや」と、かぶりを振る。

「心配ないよ。俺が執刀する。新海先生も手は出せなくてもオペには参加できそうだ」

「ああ、よかった」

 彼の顔を見たとたん、心底ホッとして、うれしさのあまり泣きたくなる気持ちを抑えた。

「ありがとう。本当に」

「いいんだ。連絡をもらってうれしかったよ」

 頼もしい微笑みを見て、また泣きそうになる。堪えるのが大変だ。

 そんなふうに優しいところが私をつらくするのよね……。

「どうぞ座って」

 啓介さんは首を回して室内を確認するように見回しながら、応接セットのソファーに腰を下ろす。

「二年前とあまり変わってないな」

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