天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 暇がなかったわけじゃないが、ぽっかりと空いた心の空洞を抱えるだけで精一杯だった。

「再婚が決まったら喜んであげないと」

「嫌だね」

 あははと仁が笑う。

「威張ってどうするんですか」

 俺だってわかってるさ。

「離れていれば辛抱できたんだがなー」

 ずっと海の向こうにいれば、あるいは受け入れられたかもしれないが。

 手を伸ばせばそこにる莉子がほかの男に抱かれるとか、乃愛がほかの男をパパと呼ぶなんて未来は、俺には絶望しかない。

「時間が解決してくれますよ」
「無理だな」

 即答ですかと、仁がまた笑う。

「一生に一度くらいいいじゃないですか? 失恋も」

 失恋?

「莉子さんが再婚すればあきらめもつきますって」

 そうか。これが失恋の痛みなのかと妙に納得する。

「女は強いな……」

 帰国したら連絡するつもりでいたのに、連絡ができずにいた俺とは違う。

 彼女は以前は苦手だったはずの懇親会に参加して、同僚のドクターと楽しそうに笑っていた。

 俺のいない未来を見ているんだろう。

 決めたのは俺なんだ……。
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