天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う

「お相手は奥さんをご病気で亡くされた三十代後半の内科医で」

 となると俺よりも年上か。

 名前を聞いてもわからなかった。都内の大学病院に勤める穏やかな男だというが、まったく記憶にない。医師全員と顔見知りなわけではないから仕方ないが、残念だ。

「お会いするのは次の土曜ですね。ホテル『コルヌイエ』のレストランでランチをと、聞きましたよ」

 なるほど。コルヌイエなら俺も利用する。感じのいいホテルだ。

「そうですか」と答えたところで扉がノックされた。

「どうぞ」

 以前と変わらぬ院長の女性秘書がにっこりと微笑みコーヒーを出してくれた。

 お久しぶりですと、軽く挨拶を交わす。

 人も室内も変わらない院長室にいると、日本を離れた二年という月日が一気に縮んだように感じる。

 あくまでも、表向きは……。


 夕方、帰る挨拶のため理事長室の前に立った。

「失礼します」

 ノックして扉を開けると莉子がひとりでいた。

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