天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
「渡米するときマンションは引き払ってしまったし、実家に帰るのも面倒でホテルを転々としてるんだ。家庭料理をしばらく食べていなくて」

 もしかして本気で作って欲しいって言ってるの?

 啓介さんは「だから作ってくれないか?」と言う。

「えっと……」

 彼の目はなぜか熱を帯びている。

 どうして? 普通に考えて、離婚した妻の手作り弁当なんて変でしょう?

 そんなことをしたら……人の目もあるし簡単に安請け合いはできない。

「無理ならいい」と軽く溜め息をつき、啓介さんは最後の一口をゴクゴクと飲む。

 そう言われてしまうと困ってしまう。無理と言うならそれこそ無理を言ってここにひと月通ってもらうのだから。

「あ、じゃ、じゃあ明日のお昼、理事長室に来てくれる? 一緒に食べましょう」

「いいのか?」

「うん。どうせ自分の分を作るから」

 啓介さんは心からうれしそうに「サンキュー」と言って立ち上がった。

「明日が楽しみだ。じゃあ」

 もう。あんな言い方されたら断れないじゃない。

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