妖の街で出会ったのは狐の少年でした

11話 隠れ鬼

みんな校長先生が怖いのか全速力で逃げている。校長先生が不憫に思えてきた。残った最年長組の私たちはゆったりとやろうとしていた。しかし、
「最年長組の3人は誰か1人でも残っていたら、今日の宿題免除だ」
そう言った途端、二人の空気が変わった。
「え」
私はジュンに手を引かれて、どこかの教室に入る。家庭科室らしい。
「こうすれば、アンタとゆっくり話せると思って。いきなり悪かった。手ぇ痛くねぇか」
「だ、大丈夫だよ。」
「ちゃんと自己紹介しねぇとな。オレの名前はジュン。見ての通りろくろ首だ」
「よろしくね、ジュン」
ちょっと口はよろしくないが、明るくていい人らしい。
「なぁ、アンタとロクって知り合いなのか?」
「私が住み込みで働いている宿屋があるんだ。そこで私の使いとして、働いているの」
「あの狐の宿屋か?」
「うん。みんないい人ばかりだよ」
「・・使いって?」
「そこで働いている従業者の補佐みたいな」
「へー、そういうのがあんだな、知らなかった」
「ロクと話はしないの?お互い年長者なのに」
「話したことはほとんどないな、近づきづらいっていくか・・・」
「そうなんだ」 
綺麗な夜景を見せてくれたり、簪をくれたり、それって全部使いの仕事だから?
「大丈夫か?アンタ」
「えっ、なにが?」
「なんか顔、曇ったから」
「大丈夫だよ、ごめん。もっと色々聞いてくるかと思った。下級生の中心にいるようなイメージだから」
「そんなことねぇよ。オレ、ほんとは口下手な方なんだよ、昔から。でもクラスの最年長がどっちもだんまりだったらチビ達、窮屈じゃないかと思って。あの年齢って騒ぎたい盛りだろ?オレが明るければ騒げるんじゃないかって
思って・・」
「優しいんだね。ジュンは」
驚いたのかジュンの首が少しだけ伸びた。
「なぁ、アンタはなんでこの世界に」
ガラッと扉が開いた。ツキナ校長先生だ
「まずい!カズハは先に逃げろ。オレも後から行く。」
私たちは逆方向に走り家庭科室を出た。しかし後ろから別の足音が聞こえる。とりあえず走り続ける。
真横のドアが開き手首を掴まれた。
「カズハ様」
「ロク」
一瞬でドアは閉まり、私はロクの腕の中にいた。何が起こったのか分からず私の頭はキャパオーバー。すぐにロクがハッとして、離れる。
「す、すみません。俺も本気になってしまって」
そんなに宿題免除が欲しいのだろうか?
気になっていたことを思い切って聞く。
「ねぇ、ロク。さっきの女の子が言ってた異端児ってどう言うこと?」
「そ、それは・・・」
カーン、カーン、カーン
鐘がなった。とりあえず私たちは校庭へ移動する。約束通り私、ロク、ジュンは宿題免除となった。今日だけ。教室へ向かおうとすると服の裾を掴まれた。
「ごめんなさい、今はまだ言えません。気持ちの整理が着くまで、待っててくれますか?」
そう言うロクの声は震えていた。
「いいよ。待つよ、ずっと」
何か、心の奥底にある本人にしか分からないことを人に話すには勇気と覚悟が必要だと私は知っている。




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